「調停人養成プログラム」(中級編)のご紹介

1 経済産業省経済産業政策局、日本仲裁人協会及び日本商事仲裁協会の協力のもとに設置された調停人養成教材作成委員会が作成した、このプログラムは、2004年度作成の「調停人養成プログラム」(基礎編)と一体をなします。そのため、初めての方は、基礎編をまずご覧ください。

2 基礎編と同様、中級編は、1)主として中小企業間や労働者との間で生ずる紛争を、非法律家(たとえば、企業人のOB)が、必要に応じて法律家の援助を受けながら調停をするにあたり、手続実施者として最低限必要な技法を修得する、2)このプログラムを使って調停人を養成(トレーニング)することを目的としまた。また、1)調停技法としては、法的な知識がなくともできる、「自主交渉援助型」(これは、Facilitative Mediation(促進型調停)を指す)を中心とし、2)実施の手順書(プロトコール)が用意されています。オープンリソースとして、幅広く利用されることを望んでいます。利用上の注意等は、基礎編で示したことと同様しで、中級編では新たに作られたDVDは購入ができます。

3 では、中級編の特徴をかいつまんでお伝えします。

(1) トレーニングの方法論としては、体験(自らやってみて)、気づき、考え(振り返る)、計画する(工夫する)という、体験型のPDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)を採用しました。そのため、まずロールプレイを行い、その後解説で振り返ることが、多くのパターンとなっています。
(2) 全体は5つの大きなモジュールに分られ、それぞれで独立してトレーニングができるように配慮されています。
(3) それぞれのモジュールについて簡単な説明を加えておきます。

1) 調停に備える(大村委員が主として担当)

この教材が対象とする自主交渉援助型調停では、客観的な証拠を分析して第三者が評価・判断するという紛争解決とは違うメカニズムで紛争を解決します。しかし、どのような調停であっても、当事者とその当事者間の紛争が存在することが前提になり、多くの場合、当事者は、調停を申し立てる前に、紛争を解決すべく、何らかの接触、すなわち交渉をしています。ここでは、このような交渉を分析するために有意義な、交渉に関する理論及び交渉を行う人の心理について検討し、自主交渉援助型調停における調停人が、調停における当事者の自主交渉を促進していくかについて、多くのヒントを理解します。

2) 調停を進める(浅井委員が主として担当)

自主交渉援助型調停において、実際にどのように紛争を解決し、調停人がその過程でどのように関与していくのかにつき、理解を深めます。採り上げる「課題の特定」と「選択肢の開発」は、紛争を解決する過程の中でも極めて重要なものです。

3) 調停を広げる(稲葉が主として担当)

調停のスキルは、言い換えたり、開いた質問をしたりするなど、コミュニケーション力だけではありません。想定した事態どおりに調停が進行することはまれで、事態対応能力が求められます。また、調停は、「単独調停人」「同席調停」だけでは対処できない場合があるので、複数調停や別席調停について考え、調停を広げます。

4) 調停を仕上げる(權田委員、手塚委員が主として担当)

調停の入口、途中、終了はいずれも調停の質が試されます。特に、調停の終結局面は、合意文書作成をはじめ、調停のクライマックスとも言える段階です。この段階で注意すべきは、まだ交渉が終わったわけではなく、交渉が続いているという認識を持つことが重要で、調停人として如何に行動すべきか(調停人の倫理)、調停をより良いものにするために法律家とどのような連携が考えられるか、また、どのように考えて合意文書を作成すべきかを検討します。

5) 調停を実施する(委員全員)

最後は、これまでに出てきた様々な概念や技法のエッセンスをまとめました。もとよりこれがすべての調停技法というわけではありませんが、当事者が主体的に対話を進めるという一見あたりまえの自主交渉援助型調停を行うためには、非常に多くの点に配慮し、緊張感のある調停セッション中に臨機応変に対応しなければならないことがわかります。基本をしっかり身につけて、自信ある態度で臨みたいと思います。ここからは、あなたが調停人です。

(4) 教材を補助するものとして、全26シーンに及ぶDVD(ビデオ)が作成されています。これは、基礎編を利用する際にも利用できるように工夫がされています。
(5) それぞれのモジュールについて、実施のヒントが示されています。

4 本教材を作成するため、米国のトレーニングを主要メンバーが受けたほか、国内の有識者からトレーニングの方法論や、カリキュラムのあり方について講義を受け、親委員会8回、4つのワーキンググループの会議が約20回、ビデオ撮影のために数日、その他、非公式な打ち合わせ、電話やメーリングリストを通じた交流が数多く行われました。ここではいちいちお礼を申すことは差し控えたいと思いますが、いずれにしろ、教材作成プロセスがまさに委員・事務局の力量を集結した自主交渉を援助型調停プロセスそのものといえると思います。その意味で、文字通り、この教材は、委員・事務局の合同の作品(アート)です。広く、また、それぞれの工夫を加えてご利用ください。


調停人養成教材作成委員会を代表して
稲葉一人

日本商事仲裁協会「調停人養成教材・中級編」


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