■ APEC 法廷外紛争解決経営者教育プロジェクト最終報告
ADR EEP 2000 Project Overseer
APEC人材養成経営管理ネットワーク名誉議長
(社)日本商事仲裁協会 顧問
前田典彦
1998年に始まったAPEC法廷外紛争解決経営者教育プロジェクト(ADR EEP)がこのほど完了した。その成果はAPECのウエブサイトで公開されているが、当然ながら全文英文であるので、この機会にその内容や利用方法を紹介するとともに、若干の所感を述べることとしたい。

APECのウエブサイトのADR EEP Historyというところでは本件事業の趣旨がAPEC首脳会議宣言(ボゴール、大阪)に遡って説明されている。さらに、日本が(財)貿易研修センターの予算で行った大阪ワークショップ等の準備段階を経て、APEC予算で約2500万円の規模を持つADR EEP 2000が成立した経緯、続いて、2000年の名古屋、バンコック、2001年のメキシコシティ、2002年のハワイ、昨年のマニラと、プロジェクトの一環として開催したシンポジウムやワークショップ等の概要が記載されている。


APECのウエブサイトの内容と利用方法

APECのウエブサイトで International Commercial Disputesを開くと、トップバーの右端に ADR Education のボタンがあり、これをクリックするとその内容が次のような小見出しの形で出る。
Introduction to ADR
Mediation FAQs (よくある質問)
Arbitration FAQs (同上)
Draft Clauses (仲裁条項などのモデル)
ADR Training Institutions
ADR EEP History
ADR EEP Experts
これらの大部分は本プロジェクトの中で開発された教材である。その多くは、ワード版だけでなくパワーポイント版にもなっているので、取り出してそのまま利用することが可能である。これらは、APEC事業の成果物として著作権はAPECの所有となっているので、ADR の普及というような公益目的に利用することには事実上制約がない。実際に2002年9月にマニラで開いたセミナーやCEOラウンドテーブルにはこれらの教材が利用された。
上記の ADR EEP History の本文はプロジェクトの報告書として作成したこともあって簡潔にしたが、その代り名古屋、バンコック、ハワイの三つのワークショップについては、事前調査の要点、参加者からの提言や議論の概要を注の形で残してある。今後、ADRの教育・普及プログラムを作成するに当っては、これらは、各国ともトップクラスの専門家の意見であるので、参考となるところ大なるものと考える。


最終イヴェント―CEOラウンドテーブル他

本プロジェクトの最終イヴェントは、昨2002年9月に Asian Institute of Management−AIM にホストして貰ってマニラで開催した。内容は、トップ経営者を対象にした半日のCEOラウンドテーブル、法務担当役員やコンサルタント、中小企業の経営者等を対象にした二日間のセミナー、これと並行して行うAPEC専門家のワークショップの三つである。 AIMはアジア経営大学院と訳されることが多いが、学長は元大蔵大臣、ディーンは元労働大臣で、小林陽太郎氏もメンバーとなっておられる評議員会の議長はフィリピン財界の長老と、有力者を擁しており、日本には見当たらないタイプの国際教育機関である。AIMがその動員力を用いて然るべき参加者を集めたことと、7月にテスト・プログラムを実施しその結果を参考にしつつハイレベルの講師陣が直前まで議論を重ね、時にはリハーサルまでしてプログラムを練り上げたこととが相俟って、CEOラウンドテーブルもセミナーも共に大成功であったと思う。しかし、筆者の立場で何か言っても自画自賛となる上に、今となってはやや鮮度が落ちたこともあり報告はこの程度に止める。ただ、余談を少々許して頂くと、CEOラウンドテーブルの座長はデ・オカンポ学長が務められたが、あまりにもADRの内容に詳しいので驚きながら聞いていたところ、公共事業か何かで大きな紛争の当事者となった経験があることがわかり膝を叩いたことであった。また、折角各国から著名な方々が来られたからと最高裁長官とのミーティングが入ったが、長官のADRに対する好意的発言は我々へのリップサーヴィスが含まれていたにしても、日本ではとても考えられないものであった。
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